【新製品】YAMAHA ニュー“L”シリーズに迫る!
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これまでのLシリーズとどこがどう変わったのか!
全ラインナップをチェックしてきました!!
Lシリーズとは
YAMAHA Lシリーズは、1974年に発売されたL-31が最初のモデル。
当時は高級手工ギターとして高嶺の花でした。
その後1985年、2004年とモデルチェンジが行われ、ラインナップも増えていき、今回のニューLシリーズが第四世代となるわけです。
歴史をつむぐこと40年
Lシリーズ誕生から40年の時を経る中で、石川鷹彦、さだまさし、長渕剛、南こうせつ、ポール・サイモン、ジョン・レノンなど、錚々たる顔ぶれがLシリーズを愛用。
その中で第三世代と呼ばれるLシリーズは「ライトゲージで鳴らす」事を考え、ブレーシングを10本から8本に、ブレーシングの角度変更など様々な点が改良されました。
そして2014年、Lシリーズは時代のニーズに応えるかのように、改めてその内部構造を変化させています。
ニュー“L”シリーズ、モデルチェンジのポイント
今回のモデルチェンジは、大きく3つのポイントに分けることが出来ます。
- ①アコースティックサウンドの追求
- ②演奏性の追及
- ③新しい機能の追及
ここででその内部に徹底的に迫ってみたいと思います。
①アコースティックサウンドの追求
ニューLシリーズはブレーシングの変更によってアコースティックな響きを大きく変えています。
まずは過去のブレーシングと比べてXの開きが大きくなっています。角度は変化がないとの事です。(2014年2月17日追記)
次にブレーシング材の形。
これがけっこう新しい。
左がこれまでのブレーシング材。
右がニューLシリーズのブレーシング材。
先端が細くなって丸く加工されていたものが、今回は四角い形です。
これによってXで交差する部分に隙間が出来ず、振動効率を上げてくれのです。
確かに上の写真を見てもしっかり交差していますね。
※新Lシリーズ26以上の国産モデルのブレーシングの形状は、交差する部分のみ四角くしており、それ以外は先端を丸くしています。 6、16に関してはブレーシング材全てが四角い材になっています。(2014年2月17日追記)
さらにA.R.E技術を全モデルに採用。
A.R.E.は、“Acoustic Resonance Enhancement”の略で、温度、湿度、気圧の調整で材をエージングさせる技術。
これまで上位機種のみに採用されていましたが、今回はLシリーズ全モデルに搭載しています。
ちなみに上の三次元グラフがA.R.E.の音響特性を表したもの。
中低域の伸び、高域のアタック感(高域はサスティンが短めになって耳障りな感じが減っています)の増大が特徴。
②演奏性の追及
ニューLシリーズは新しいネックシェイプになっています。
まずは画像でチェックしましょう。
これまでネック全体的にVに近いグリップだったのが、ハイポジションに行くにしたがってゆるいVになり、薄く仕上げられるようになりました。
同時に、指板のエッジも丸く面取りされていて、演奏性が格段に上がるのです。
更に弦高、弦間も変更されていますね。
1弦側を高く、6弦側を低くして、弦間を広くすることによってコードを押さえる際のストレスも少なくなっています。
これまで「YAMAHAアコースティックギター=弦高が高い、コードを押さえる時に力が必要」というイメージを持っていた方も少なくないと思います。
(実は私もその一人でした!)
しか〜し! 今回弾いてみた感覚ではそういったストレスがほぼありません!!
③新しい機能の追求
今回機能面で追加されたのは5つの点。
まずはピックアップです。
ラインナップ中、L6~L16はエレアコにモデルチェンジ。
「エレアコにしたら鳴らなくなるじゃん!」という心配は無用。
今回搭載されたPUはパッシブ、すなわちプリアンプ非搭載。
そのためPUを搭載していない状態とほぼ変わらない質量で、さらにボディに加工もしていないため、「アコースティックサウンドの追求」の邪魔は
しないのです!
次にネックとヘッド裏。
ネックはマホガニーとローズウッドの5ピース。(LL86のみマホガニーとパドック*の5ピース)
ねじれと反りに強くなって、いつでも同じコンディションで演奏が可能。
L26以上にはヘッド裏化粧板と、ボリュート加工が施してあります。
パドック:パドゥーク、パドークとも呼ばれる、アフリカ大陸原産の木材。乾燥後の安定性が高い。
ネック接合もこれまでより深くなりました。
(L26~L86のみ)
ネックの接合が深くなることで、ギター自体の安定度が増し、サスティンを稼げます。
トラスロッドにも工夫が施されてて、
順反りだけでなく逆反りにも力を加えて調整できるようになりました。
そして最後に石粉目止めラッカー塗装!
(L36~L86のみ)
ラッカー塗装を行う前の初期段階に、石粉による目止めを行うことで「レスポンス、ダイナミックスレンジが格段に向上」とご説明いただきました。
カタカナ語が多くてムズカシイデスネ...
弾いてみたところ、ようは音の立ち上がりが良くて、音量が出ました!
そういうことですね、YAMAHAさん!!
ニューLシリーズ ラインナップ
今回、ニューLシリーズほぼ全モデルを弾かせてもらいました。
いや~、とっても良い♪
と言うわけで、ラインナップを紹介していきましょう!
最後にワタクシの本音の感想も書いておきますね。
LL86 Custom ARE
出ました、まずはLシリーズのフラッグシップモデル!
メーカー希望小売価格はなんと、¥1,500,000!!
見てください、この美しいTOP。
厳選されたイングルマン・スプルースが使用されています。
うわさのネック接合部ですよ。
まあ実際に接合部は見えないワケで、目を奪われるのは美しいウッド・バインディング。
バックの化粧板もきっと厳選されているんでしょう。
だって木目が美しいんですもの。
ペグもYAMAHAの最高級品位、「TM67」が乗ってますね。
この「どうだ!」と言わんばかりのハカランダ。
この贅沢モンが!!
LS56 Custom ARE
こちらも受注生産ラインのLS56。
LLよりもちょっと小ぶりなボディで弾きやすさ抜群です。
メーカー希望小売価格は、さっきのLL86 Customを見たらなんだか安く思えてしまう¥500,000(税抜)。
ネックエッジの処理は丸みを帯びていて弾きやすいです。
バインディングもウッドバインディングなので美しさは健在。
ヘッドストックも変わらず豪華!
86と比べると木材の色の明るさで印象がだいぶ変わりますね。
裏から見たら86と見間違う!?
ネックがマホガニーとローズウッドの5ピースになっていること、
バックとサイドがインドローズになっていることを除けば、86とほぼ変わらない仕様。
この56シリーズはかなりコストパフォーマンスが高いと言えます。
LJ36 ARE
続いてLJ36。
LJは「ミディアム・ジャンボ」サイズなので、LLの「ジャンボ・サイズ」より少々小ぶり。
LLとLSの中間で、オールマイティーなモデル。
36シリーズなので、メーカー希望小売価格もグッとお手ごろになって¥360,000(税抜)。
お手ごろとは言ってもねぇ...
36万円定価ですからねぇ...
ポジションマークが多少(ホントに多少ですがw)、簡素になっている模様。
でもボディ周りにはやっぱりアバロン。
36はペグがSG-301になります。
しっかりボリュートはあって、弾きやすさと強度で文句ナシ。
LL36 ARE
細かな仕様はLJ36と同じですが、LL36も弾いてみました。
メーカー希望小売価格は¥360,000(税抜)でLJと変わらずです。
仕様はLJ36と同じとはいえ、ボディが大きい分ちょっと貫禄がありますね、LL36。
LJ36よりも「ガツン!」としたアタック感とボディ鳴りが印象的です。
LS26 ARE
ニューLシリーズの中で、ひときわ存在感があるのが26のラインかもしれません。
ちなみにメーカー希望小売価格は¥290,000(税抜)。
ウッドバインディングなところは変わらず。
ちなみに塗装は26以下すべてウレタン塗装になります。
それよりもココですよ、ネックのバインディング。
バインディングが無いので、よりヴィンテージな感じが演出されてるじゃないですか~
ポジションマークもあえてシンプルながら、高級感♪
そしてペグはオープンタイプのSD-700XG。
これはある意味YAMAHAっぽくないところがステキ。
YAMAHAって「堅牢」なイメージがあったんですよ、ワタシには。
でもヴィンテージの、なんというか弱々しさと言うか、繊細な感じ。
それがこのモデルにはあるんですよね~
ちなみにこのモデル以下はバックとサイドが「ローズウッド単板」と表記されています。
LL26 ARE
さきほどのヴィンテージライクなLS26のボディサイズ違い。
LLなのでジャンボタイプです。
メーカー希望小売価格は¥290,000(税込)。
MartinのD28と真っ向勝負できるレベルだと思います、コレ。
LS16 ARE
続いてメーカー希望小売価格も¥100,000(税抜)と、より手ごろなモデル、LS16。
ここからナット&サドルがユリア樹脂、ペグがTM-29に変更されます。
そして何よりも16のラインにはサンバースト・カラーがラインナップ。
(レフトハンド、12弦仕様は除く)
この価格帯でも指板はエボニー!
付属ケースがハードケースからライトハードケースとなり、初心者~中級者と幅広く満足できるモデルですね。
LJ6 ARE
Lシリーズの中でも一番価格を抑えた6のライン。
これはLJ6なので、ミディアムジャンボ・ボディタイプ。
メーカー希望小売価格、¥60,000(税抜)
バインディングはセルになっていますが、サウンドホール周りの装飾はしっかりあって高級感もアリ。
ポジションマークはシンプルなドットですね。
指板材はエボニーではなく、ローズウッド。
ヘッドもYAMAHAらしい、シンプルな仕上げ。
ペグはけっこう頑丈な感じ。
ヘッド裏。
5ピース構造のネックもしっかり分かりますね。
この強度は安心度高いです。
ボディバック、サイドの材は「ローズウッド」と表記されているので、プライウッドですね。
LL6 ARE
今回の6ラインにはカラーがナチュラルとブラウンサンバースト、そしてLL6のみのカラーとしてブラックとダークティンテッドが用意されています。
使い込まれて変色したかのようなダークティンテッドのLL6。
メーカー希望小売価格¥60,000ながら風格漂うルックスが魅力ですね。
基本的な仕様はLJ6と同じ。
ただこのカラーリングは惹かれますね~
旧モデルとの細部比較
ちょうど旧Lシリーズもあったので、細部を比較してみましょう!
新LL36 vs 旧LL36
左が新LL36、右が旧LL36です。
ピックガードがべっ甲柄に変更されたんですね!
その他基本的な装飾類に変更はありません。
塗装がどちらもラッカーですが、新シリーズは石粉止め仕様に変更。
ヘッド裏の化粧板も新シリーズならではです。
旧シリーズは5ピースネックですが、化粧板がありません。
ボリュート加工もナシです。
ポジションマークの変更はなさそうですね。
大きな違いはやはりブレーシングになるでしょう。
新シリーズは四角いブレーシング材、旧シリーズはノンスキャロップドの先端が丸い材。
音質的な違いも大きく、新シリーズのほうが低音のコシがあります。
新LL6(一部LJ6) vs 旧LL6
一番手ごろな価格の6ライン。
これもピックガードはべっ甲柄に。
セルバインディングには変更ありませんが、
ボディトップ材がARE処理されているのが新6ラインの特徴!
これはうれしい仕様変更ですね~
...しかーし!
ネック裏から見てみると、マホガニーとローズの3ピースだったネックが、5ピースになったのは大きな変化!
強度が増して、安心感ありますよ。
もちろん新シリーズはエレアコ化していますので、実用性の高さもかなり評価UP!
これでメーカー希望小売価格が変わらないんだから、YAMAHAさん、かなり頑張ったんじゃないでしょうか。
YAMAHA 新Lシリーズまとめ
今回YAMAHAの新Lシリーズを弾いてみて、総じて感じたのが「中低域の鳴り」。
これまでYAMAHAのアコースティックギターのイメージと言えば、音のハリがあって立ち上がりは良いけど、イマイチ低音感が足りない...といったものでした。(※個人的感想です)
その辺をYAMAHAの技術者さんに伺ってみました。
これまでのYAMAHA製品は、音のキャラクターを作らずにプレイヤーの演奏、個性がそのまま反映されるようにしていました。
なので周波数特性も比較的フラットなものでした。
ピアノやドラム、その他YAMAHA製品にはそういったベースの考えがあるんです。でも今回の新Lシリーズは思い切ってギターに個性を持たせたんです。
「これがYAMAHAが考える良いアコースティックギター・サウンドだ」って。そこに向けて、全機種にARE処理を行い、ブレーシング材の形も変えて、16ライン以下のモデルにはピックアップも標準装備されています。
おおぉぉぉ!
これはすごい事ですよ!
YAMAHAのベースの考え方をある意味覆して、YAMAHAアコギサウンドを作り直したと言っても過言ではありません。
確かに今回のモデルは、これまでのYAMAHAアコースティックギターのような「シャリ~ン」といった華やかさが目立たなくなっています。
あえて中低域を目立たせてサウンドにガッツを出している印象。
旧シリーズはフラットな特性にしていたことで、人間の耳に届きやすい中高域成分が目立っていたんでしょうね。
この変化はかなりの路線変更です。
YAMAHAさん、なんだかアツイっす。
「アコギ買おっかな♪」って思ったら、ぜひ一度は新Lシリーズを試してください。
特に旧Lシリーズを知っている方は、とりあえず弾くだけ弾いてみてください。
その変貌っぷりにきっと驚くはずです。
2014年3月1日(土)、全国一斉発売です!
YAMAHA新Lシリーズスペック表
最後に、今回の新Lシリーズスペック表を記載します。
ぜひギター選びの参考にしてみてください。
※クリックで拡大します。
3月1日以降、ギタセレにもどんどん新Lシリーズが上がってくることでしょう。
お楽しみに~!