こんにちはサカウエです。前回まででご紹介したシンセサイザーの音作りで重要な2つの要素「ADSR」と「フィルター」をおさらいしましょう。
【初心者のためのシンセ音作り】 その1 音の出だしとADSR
【初心者のためのシンセ音作り】 その2 音色を変えるフィルター
さて今回使用するのは、アナログ・モジュラーシンセをソフト化したArturiaのソフトシンセ「Modular V」です。この「Modular V」はソフト上でケーブルを繋いで音作りができるソフトシンセです。シンセ内部の信号の流れや各パーツの仕組みが体感することができるので、シンセの構造を学ぶのに最適なソフトシンセということができるでしょう。
では実際に音出しをしてみることにします。
まずは初期状態。つまりケーブルが一本も繋がっていない状態です。この「Modular V」は「Moog III C」というビンテージシンセ(以降「実機」)をソフト化したものです。ソフトシンセではあっても、パッチングやツマミを動かした際の動作や反応はほぼ実機と同じと思ってください。
この初期状態ではいくら鍵盤を弾いても音は出ません(実機も同様)
さて膨大なツマミとジャックに圧倒されて何が何だかよくわからない・・・というのが第一印象だと思います。しかし実際は同じ役割をもったパーツ(モジュール)が沢山あるだけなので思ったほど複雑ではないのですね。JUNOなどのシンセと構造・考え方は同じなので、前回、前々回で覚えた知識があればモジュラーシンセも怖くはありません(これホント)
実機では音色を作る際、この様に毎回パッチングを行わなくてはならないのですが、ソフトシンセノ場合は著名サウンドデザイナーによる膨大なプリセットが収録されているので、買ってすぐにさまざまな最強アナログサウンドを楽しむことができます。
ライブでモジューラーシンセを演奏するELPのキース・エマーソン様(3”00 以降に注目!4"00~プレイしているのはリボンコントローラー)
では今回使用するモジュールをピックアップしてみます。今回使うのは主に下図の黄枠の部分となります。それぞれ
- オシレーター(基本になる音を出力する部分)
- フィルター(音色を変える)
- アンプ(音の出口)
- ミキサー
となります。
Modular V にはオシレーターが全部で9個用意されており、そのせいで下図のように大きな面積を占めているのです(3コのオシレーターごとにそれらを統合してコントロールする「ドライバ」とよばれるパーツもあります)フィルターは3つ、アンプは2つ、ミキサーは16チャンネルというわけですね。
シンセサイザー内部の信号の流れは
が基本です。JUNOなどのデジタルシンセなども考え方は同じです。
ではここで、1個のオシレーターをフィルターを通さずに直接アンプに繋いでみましょう。
オシレーターのノコギリ波出力がアンプに流れているだけなので、鍵盤を弾くと「プー」という超地味な音が出るようになります(※)。アンプモジュールにはADSRが付いているので音の出方(消え方)などをコントロールすることができます。しかし音色は一切変更することはできません。
※実機の場合は、鍵盤のトリガーでオシレーターの信号が流れるようにするためのパッチングが別途必要となります。
ADSRをコントロールするエンベロープ・ジェネレーター付きのアンプモジュール
次にオシレーターからフィルターにパッチングしてみます。
アンプを通っていないのでこのままでは音がでません。そこでフィルターの出力からアンプの入力にパッチングします。
これで鍵盤を弾くと音が出て、しかもフィルターモジュールのカットオフをグリグリすれば音色が変わるようになります。シンセらしくなってきましたね。
Filterモジュール
もし「ビョーン」といったシンセベースのような音色を作りたい場合は、フィルターにもADSRで時間的な音色変化を与えれば良いですね。その場合は、アンプ部分とは別の「ADSRモジュール(黄枠)」からフィルターにパッチングしてやります。
以上が1オシレーターを使用したシンセの基本パッチングです。
次に複数のオシレーターをミキサーでミックスしてフィルターにパッチングしてみましょう。黄枠の3つのオシレーターをミキサーでミックスしてフィルターにつないでいます。
例えばオシレーター2と3のチューニングを微妙にズラしてやると(デチューンといいます)アナログシンセ独特のファットなサウンドを得ることができます。またオシレーター2と3をオクターブ下(上)にセッティングしたり、完全5度、4度等にするといったテクニックもよく使われます。
アナログシンセの銘器「ミニモーグ」は、上記のようなパッチングがすでに内部で結線されているコンパクト版シンセと考えてください。
Mini Moog
photo by Wikipedia
今回紹介した、オシレーター、フィルター、ADSR等のモジュールの他にも、モジュラーシンセにはさまざまなモジュールが存在し、自由度の高いシンセサイズ(音作り)が可能となっています。最近流行のユーロラック・モジュラーシンセなども基本は全く同じです。
Roland AIRA 512モジュール
Doepfer A-100 BS-2-P9
というわけで、モジュラーシンセはシンセの音作りの基本を体系的に学ぶことができるのですね。みなさんもぜひ、モジュラーシンセの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?楽しいですよ~~
【関連記事】ローランド AIRA Modularシリーズ 10機種が発表! なんとアナログシンセ・モジュール SYSTEM-500 も登場!
【関連記事】「ユーロラック/モジュラーシンセ」の世界
モジュラーシンセの映画もあります
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