モジュラーシンセ店頭導入企画!初心者のためのモジュラーシンセ講座

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ssモジュアイ

こんにちは、梅田ロフト店DJ・デジタル機器担当の阪口です。

今回はモジュラーシンセについての記事を掲載したいと思います。モジュラーシンセについては梅田ロフト店の店頭に導入して以来、多くの方々に興味を持って触っていただいていますが、特にこれからモジュラーシンセを始めてみたい、モジュラーシンセを触ったことがないけど最近良く見かけるので興味がある、、という方にとってはまだまだ敷居の高いイメージがあるように感じています。

そういった方々にモジュラーシンセをもっと身近で簡単に始められる一つの楽器、ツールであることを伝えるためにはどうしたら良いのか、、と考えていたところ、自分の音楽仲間のshinpalさんも全く同じことを考えていて、「じゃあweb記事を書くよ!」と言ってくださり、下記の原稿を仕上げてくださいました。

shinpalさん本当にありがとうございました!

というわけで以下よりshinpalさんの記事となりますので、ぜひご一読ください↓

モジュラーシンセを使おう!

文:shinpal(South Osaka Modular Club)

昨今、海外の有名アーティストが新しい表現方法の一つとして導入したり、海外の楽器ショーでも専門ブースが出されたり、日本でも大きなフェスが開かれたりなど、モジュラーシンセが話題となってきていますが、実際にはなかなか楽器店に展示していないため触れる機会がなく、また日本語のWEB情報もまだまだ少ないために、「モジュラーシンセって何?」「どうやって音出すの?」「興味はあるけど難しそう」「自分の楽曲制作にどう活かせるの?」などなど、敷居が高いイメージがあるのではないでしょうか。

でも、モジュラーシンセは難しくない! 他の機材と一緒で慣れれば大丈夫! 発想次第で無限の可能性がある! 楽曲制作の幅が拡がる! シンセ本来の面白さが楽しめる! と筆者は感じており、今回モジュラーシンセの楽しさ、奥深さを多くの人に知ってもらい、よし使ってみよう! と興味を持っていただけましたら幸いです。

モジュラーシンセってどんなもの?

実はモジュラーシンセは昔からあるもので、今のシンセサイザーの元々の形はこのような大きなモジュラーシンセだったのです。モジュラーシンセは、シンセサイザーの構成要素(オシレーターやエンべロープジェネレータやLFOなど)が一つ一つのモジュールになっていて、モジュールどうしをパッチケーブルという線で結線して、自由に音を出したり変化させたりする機材で、まさにシンセの基本とも呼べるものです。

Moogモジュラーシンセ System35(上段モジュールとキーボードはオプション)

moog system35

それがテクノロジーの発達とともに、モジュラーシンセは内部結線された一体型シンセとなり、現在は小型化&デジタル化されて皆さんが手にしているバーチャルアナログシンセや、コンピュータベースのソフトウェアシンセに進化しました。

Native Instruments Pro-52

ni pro52

そのため、昔のモジュラーシンセは無くなったのか? と思いきや、実はモジュラーシンセは無くなるどころか現代のテクノロジーを取り入れて進化していたんです!

makenoise shared systemMake Noise Shared System

見ていただけるとわかりますが、すごく小型化されていて、モジュールのデザインもケースもなんだかおしゃれですよね。これだったら部屋のインテリアとしても一台あってもいいかなー、と思いますよね。パッチケーブルが縦横無尽に結線されている様子も、ラップトップ&ソフトシンセとはまた違ったかっこ良さがあり、メカ好き男子&女子には堪らないんではないでしょうか。。。

このように、モジュラーシンセはシンセの基本形であるとともに、現在のモジュラーシンセはあらゆる面で進化しており、それが様々なアーティストから注目されているんですね!

どんなアーティストが使っているの?

古き良き時代のモジュラーシンセは、世界的に有名な日本の冨田勲氏、プログレのスーパーキーボディストであるキースエマーソン、シンセミュージックの先駆者タンジェリンドリームや中高年の憧れYMOの第4のメンバーといわれた松武秀樹氏が使っていました。でも、当時は価格が非常に高く、生産量の関係から入手も難しかったので、ごく一握りのアーティストのみが使っていたように思います。(このあたりの歴史に興味ある人はウィキペディアを参照してくださいー)

冨田冨田勲氏

今は実に様々なアーティストが使っています。インダストリアルの大物ナインインチネイルズのトレント・レズナーやアレッサンドロ・コルティーニ、ヤズーやイレイジャーで知られるヴィンス・クラーク、デトロイトテクノのカール・クレイグ、ミニマルテクノのサージョン他、実に様々なアーティストがその可能性に魅入られて、楽曲制作に取り入れています。また、モジュラーシンセのムーブメントが大きくなるにつれて、セミプロや趣味で音楽をやっている人たちもモジュラーシンセを手にするようになり、YouTube上には無数のパフォーマンス動画が上がってきています。

ヴィンスクラークヴィンス・クラーク

また、日本でも年々盛り上がってきており、東京や大阪を中心にモジュラーシンセのイベントを定期的に開催するアーティストの方々がおられ、その魅力をいろんな人に伝えようと頑張っておられ、大きなムーブメントに成長しつつあります。

なぜモジュラーシンセを使うの?

いろんなアーティストが使っていますが、何がいいのでしょうか? バーチャルアナログシンセやソフトシンセでいいんじゃないのか? と思いますよねー。

まずは下記の動画を見てください。モジュラーシンセの使い手で有名なリチャード・ディバインのNAMMショーでのデモ演奏です。

どうです、これが音楽? 曲になってないんじゃないのー? こんなサウンド初めて聞いた! 鍵盤ないけどどうやって演奏してるの? とかいろんな感想があると思いますが、筆者はこれはコンピュータベースのソフトシンセやDAWではなかなか出せないサウンドと思いました。時間軸がすごく自由で、一つ一つの音が常にランダムに変化しており、何かバイオリンや尺八を演奏しているような艶めかしさが感じられると思います。

もう一つ次の動画を見てください。ミニマルテクノの大御所サージョンのライブです。

どうです、このドライブ感! ラップトップをベースにしながらも、モジュラーでミニマルなフレーズを変化させてすごいグルーブを作っていますね。モジュラーのつまみを回すことでダイレクトな音の変化を感じながら展開を作っていると思います。

このように、モジュラーシンセの醍醐味は、自分が作り上げたオリジナルなパッチを使って、たくさんのつまみを直接操作して音を自在に変化させたり、ランダムな信号を使って音を不規則に変化させたりすることが出来るので、すごく面白いのです! このあたりが、便利になりすぎてプリセット音ばかり使ってしまってシンセ本来の音作りの楽しさがなくなってきている状況に不満なアーティストが飛びついてきている部分と思います。ぜひ、皆さんもモジュラーシンセを使ってみていただければ、その楽しさと可能性が理解できると思います!

どんなモジュラーシンセがあるの?

昔は大手シンセメーカ(MoogやRolandなど)が作っていましたが、昨今の自作シンセやサーキットベンディングのムーブメントの流れを受けて、今はギターペダルのメーカや、個人で工房を立ち上げて参入するメーカが多くなってきており、現在180社!(ModularGridというモジュラーシンセ専門のサイトで登録されているメーカ数)を超えるメーカが日々様々な工夫を凝らしたモジュールをリリースしています。値段も様々で、1万円弱のシンプルなモジュールから、5万円を超えるような多機能で大掛かりなモジュールまであり、その中から自分が気に入った機能、価格のモジュールを選べるという、非常にエキサイティングな状況です。

ここで、モジュール自体は現在のモジュラーシンセの先駆者Doepfer社の採用したユーロラック規格に準拠した電源とオーディオ&シグナルの仕様となっていますので、これら様々なメーカのモジュールをどのように組み合わせても基本的にはOK!という、自作PCの世界観や、DAWのプラグイン的な面白さと同様に、自分だけのオリジナルなモジュラーシンセを作ることが出来るのです。この自分だけのシンセを作ることができるというところが、機材にすごく愛着がわいて、何だかいいじゃありませんか。。。

とは言っても、たくさんの選択肢があると何が何やらさっぱり、、、というのが人間というもので、どんなモジュールメーカがどのようなモジュールを作っているのか少し紹介します。

DOEPFER

言わずと知れた現在のモジュラーシンセの標準を作ったメーカです。もともとはアナログシンセ(名機MS-404やDarkEnergy等)で有名なメーカですが、現在はたくさんのモジュールをリリースしています。オシレータやフィルターといった基本的なモジュールを中心にベーシックなラインナップがあります。日本でも以前から輸入代理店があり、モジュラーシステムのA-100 BS-2-P9は多くの日本のモジュラーアーティストが導入しています。

A-100モジュラーシステム A-100 BS-2-P9

Make Noise

昨今のモジュラームーブメントの中心的メーカです。代表のトニー・ロランド氏が始めた個人工房ですが、西海岸で生まれた伝説的モジュラーシンセであるブックラ等に影響された、複雑なモジュレーションが可能な一筋縄ではいかないモジュールをリリースしています。先に紹介したリチャード・ディバインもこのメーカの大ファンでアドバイザーとして参画したり、同社モジュラーシステムのデモ演奏をしたりしているようです。モジュールとして世界中で最も売れたと言われているMathsというLFO&エンベロープの複合モジュールは、著名なモジュラーアーティストのラックに必ず入っています。

MathsMaths

Mutable Instruments

もともとPalmというPDA向けのDAW&ソフトシンセの開発で有名なオリバー・ジレット氏が始めたメーカです。オリバー氏がもともとソフトウェアの開発者だったこともあると思うのですが、このメーカの特徴はデジタルを駆使した多機能かつ高音質なモジュールにあります。デジタルオシレータとして有名なBraidsというモジュールは、多くの発音モデルをもっており、基本的な波形から、弦のようなモデル、コード発生ができるモデルなどを備えています。また非常に面白いことに、内蔵ファームウェアのアップデートで新たな発音モデルや機能の追加がなされており、今後も進化する可能性を秘めています。

mutable braidsBraids

Pittsburgh Modular

USAのピッツバーグに拠点をおく同社は、リチャード・ニコル氏による個人工房です。とても多くのモジュールをリリースしており、基本的なモジュールからMake Noiseのような凝ったモジュールまであり、そのリーズナブルな価格もあいまってDOEPFERと並んでモジュラーシンセのスタンダードな存在と思います。ここもFoundationという主要なモジュールを搭載したモジュラーシステムをリリースしており、同社製ポータブルケースとのマッチングもばっちりでとてもスタイリッシュです。

foundation3モジュラーシステム Foundation3

Malekko Heavy Industry

USAのモジュラーメーカが多く存在するポートランドに拠点を置く同社は、ギターペダルのメーカとしても有名です。Rolandがモジュラーに再参入するモジュールのアナログ設計を担当したことでも話題になりました。西海岸のモジュラーシンセであるWiardから仕様のライセンスをうけており、ビンテージな音質のアナログモジュールは人気が高いです。

richter oscillatorRichter Oscillator

TipTop Audio

テクノ系アーティストが使うことを想定したかのようなモジュールを多くリリースしており、クラブ系アーティストがモジュラーを導入する際に要注目のメーカです。909&808の音源モジュールやモジュラーで1曲分の緻密なリズムプログラムが可能なCircadian Rhythmsというキラーモジュールをリリースしている一方で、モジュラー入門用に最適なHappy Ending Kitというケース&電源キットを安価に提供しており、様々な製品をリリースしています。

circadian rhythmsCircadian Rhythms

happy ending kitHappy Ending Kit

以上のメーカの他にも、デジタルを駆使したウェーブテーブルオシレータをリリースしているSynthesis Technologyや、クロックジェネレータを中心とした4ms、クリアな音質と大小様々なモジュールをリリースするIntellijelなど、とても面白く良質なモジュールをリリースしているメーカがたくさんありますので、気になるメーカやモジュールはWebやYouTubeでチェックしてみるといいと思います。

モジュラーシンセを導入してみよう!

以上でモジュラーシンセの大まかな情報は理解できたかと思います。しかし、「なるほどモジュラーシンセは面白そうだ。使ってみたいけど何から始めればいいの?」とか「実際に触ってみたいけど、どこに行けばいいの?」とか「楽曲制作に導入したいけど、どうすればいいの?」とか具体的に何をどうすればいいのかわからない部分も多いですよね!

ここでは、そんな疑問へ出来るだけ具体的に答えたいと思います。

1.どこで触れるのか、買えるのか

大阪では島村楽器の梅田ロフト店に実機が展示されており自由に触れます。また展示機以外のメーカーのモジュラーも随時導入予定だそうです。また、ご自身も現役DJでイベントオーガナイザーでもあるDJ&デジタル機器担当の阪口さんに相談すれば購入も可能です。

また、島村楽器以外でも東京と大阪で数店舗、実機展示&販売を行っていますので是非足を運んでみてください!

2.何から始めればいいのか

実はモジュラーシンセを始める際に、意外とネックとなるのがケースと電源なのです。筆者もモジュラーシンセを最初に購入したとき、ケースと電源の初期投資に悩みました。意外と高いのです。モジュール自体は安価なものもあり敷居は低いのですが、モジュラーメーカのケース&電源がかなり高い! 先に紹介したDoepferの代表的なポータブルケース(A-100 BS-2-P9、252HPというサイズで多くのモジュールを搭載可能)で8万円台、比較的安いPittsburgh Modularのポータブルケース(MOVE104、104HPというサイズ)でも5万円弱というのが日本での相場ですので、こりゃ購入するのをためらうのは、よーくわかります。(モジュラーの横幅はHPというサイズが基準で、ケースはこのサイズが大きいほど多くのモジュールを搭載できます)

ではどうしたらよいか? 筆者としては次の2つの方法があると思います。

TipTop AudioのHappy Ending Kitを買う

Happy Ending Kitは日本での相場が2万円台と安く、84HPというサイズ分のモジュールを搭載することが出来るので、当面気に入ったモジュールを買い足していくのに最適です。本体はモジュール搭載のためのレール&側板、電源のセットといたってシンプルですが、後々ライブ会場に持ち込むときの外装ケースも一般的な3Uラックを使えますので応用が効くと思います。先般のモジュラーフェスで来日したラッセル・ハズウェル氏もこのHappy Ending Kit2台でライブしていましたね。

電源は購入してケースを自作で安く上げる

もしDIY(あるいは日曜大工)の心得があるならケースを自作してしまいましょう。電源自体は2万円弱が相場ですので、ケースを自作すればかなり安く出来ます。かくいう筆者も、レールと電源を別途購入し、ケースは島村楽器のED Gearというエフェクターケースを使ってポータブルモジュラーケースを自作しました。

自作ケース

筆者も日曜大工が得意ではないので、少し制作には手間取りましたが、自作したモジュラーケースは世界に一つのものなので、感激もひとしおです。。。(涙)

まあ、資金に余裕がある人は思い切ってメーカ製のケースを買ってもいいと思います。そこから徐々にモジュールを買い足していくことが、とても楽しいひとときとなりますよー!

3.モジュールの購入

ケースと電源が揃ったら、モジュールを買いましょう。その際にセオリーは無いと筆者は思います。自分がやりたいことが出来るモジュールを買えばいいのです。先に述べたModularGridのサイトで機能をチェックしてもいいですし、日本語の解説サイトもありますのでそこで当たりをつけて実際の音をYouTubeでチェックすればいいと思います。

もし、モジュラーシンセで何がしたいか明確でなく、面白そうだから使ってみたい人もいると思いますが、それもOKと思います。その場合は、自分の気に入ったオシレータとVCA付きフィルターとエンベロープジェネレータまたはLFOから始めればいいと思います。この構成から次にランダム信号が出せるモジュールやトリガーシーケンサを買えばかなりいろんなことができるようになると思います。

迷ったり、やっぱりよくわからんという方は、島村楽器の阪口さんに相談してくださいー。

4.モジュラーシンセで音を出す

さて、ケースと電源も用意した、モジュールも少し揃えたけど、どんなふうに音を出すの? ということになると思います。ただ、実際モジュラーシンセを買おうという方は、今までにハードシンセであれソフトシンセであれ、何がしかシンセをかなり使ってきた方と思いますので、音を出すのはそう難しくないと思います。今までの一体型シンセと違うのは内部結線されてませんので、パッチケーブルで結線する「パッチング」という作業が必要なところです。このパッチングを行ってモジュールどうしを結線してやらないと、モジュラーシンセから音は出ません。まさにこのパッチング作業がモジュラーシンセの音作りの醍醐味といっていいでしょう。全くシンセに触ったことがないよー、という方も大丈夫、このパッチング作業を試行錯誤していくことで、自分のモジュールが出せる音の仕組みと可能性がよくわかってきます。

音出しの基本はオシレータ

いきなりやみくもにパッチングしても音は出ません。まずはオシレータのオーディオアウトをスピーカーかヘッドフォンにつながっているミキサー(または何らかのオーディオ機器)につなぎましょう。ピーとかポーとか音が鳴ります。簡単ですねー。ここで、オシレータのフリケンシー(周波数)を調整するつまみを回すと音程が変わります。気持ちいい変化ですねー。また、音の波形(サイン波とか矩形波とか)を変化させるつまみ(シェイプとか書いてあるのがそれです)があるときは回してみましょう。音が丸くなったり尖ったりして気持ちいいですねー。例として、Make NoiseのオシレータモジュールSTOを使って実際に音出ししたので見てください。

これがモジュラーシンセの基本です。あとは、このつまみを手で回していたのを、別のモジュールから信号を送って自動的に変化させると面白い音が得られます。シーケンサモジュールからフリケンシーにパッチングし、シェイプにLFOからサイン波をパッチングした例を見てください。

また、オシレータではつけられない変化(音の明暗や音量)が欲しいときは、オシレータのオーディオアウトからフィルターモジュールやVCA&エンベロープジェネレータモジュールにパッチングしていけばいいのです。

このように、音が出るモジュール(オシレータ、場合によってはフィルターの自己発振など)を基本にして、その音をどのように変化させるかで必要なモジュールをパッチングすればいいのです。モジュールどうしは、どのようにパッチングしても壊れることはありませんので、好きにパッチングして実験をすればいいと思います。極端な話、モジュールの信号のインとインどうし、アウトとアウトどうしをつないでも大丈夫です。セオリーはありませんので自分なりのパッチングを見つけて新しい音を発見してください!

モジュラーシンセならではのテクニック

とはいえ、基本的な話だけであとは好きにパッチングしろ、なんて言われてもどうしたらいいの? とか、モジュラーシンセで特徴的なパッチングはどんなのがあるの? という疑問はもっともです。そこで、モジュラーならではの簡単な音作りを少し紹介します。

フリケンシーモジュレーション(FM)

そんなの知ってるよ、シンセの基本じゃん、って思うと思いますがその通りです。しかし、このFMをオシレータからのオーディオ信号でかけると、往年のデジタルシンセの名機DX-7のような金属的な音が出せます。例としてSTOにPittsburgh Modularのオシレータからオーディオ信号をパッチングした動画を見てください。

面白い音が出てますねー。受け側のSTOと送り側のオシレータのフリケンシーノブを微妙にいじることで、丁度良いサウンドが出せますね。これをVCA&エンベロープでパーカッシブに音量変化をつけて、トリガーシーケンサでリズムをつけてやれば、面白いメタリックなリズムが出せますよねー。

ランダムトリガー

これは筆者としてはモジュラーならではのテクニックと思います。外部信号をパッチングして速さが変わるLFOを持っている場合に可能です。外部信号としてランダムな信号が出せるモジュールからLFOのフリケンシーにパッチングし、LFOから矩形波を出力してそれをトリガー信号として、パーカッシブな音を叩けば、時間的にランダムなリズムが出来ます。実際に、Synthesis TechnologyのLFOにEO WaveのLFOのランダム信号を入力して、ランダムトリガーを作ってリズムを出している動画を見てください。

これをDAWで作ろうとするとなかなか難しいんじゃないでしょうか。ランダムなリズムは完全にコントロール出来てるわけではないですが、調整の具合で非常に音楽的になりますね。いい意味でモジュラーシンセの不完全性、ランダム性が出てると思います。

上記以外にもモジュラーシンセ使いのアーティストはそれぞれ独自のテクニックを持っていると思いますが、それも何か教科書があって出来てるわけではなく、いっぱいモジュラーシンセを触って試してみることから出来ることと思います。ぜひ皆さんならではの使い方を見つけてください!

5.モジュラーシンセを楽曲制作に活用する

さて、ここまで読んで頂いたあなたはもうモジュラーシンセのことは大体理解し、島村楽器梅田LOFT店にあるモジュラーシンセを店頭で臆せず触れることでしょう。(気後れしたら、担当の阪口さんに相談してください。。。) しかし、モジュラーシンセで自在に音作り出来ても、どうやって楽曲制作に活かせばいいの? と、ごもっともな疑問です。

制作に応用するには幾つか方法が考えられます。

・モジュラーシンセを単体シンセと考えて、MIDIとモジュラーの信号(CV&ゲート/トリガー)を変換するモジュールや機材を使って、外部シーケンサ(ElectronのAnalog Fourなど)やコンピュータのDAWからコントロール

・モジュラーシンセをオーディオの素材と考えて、コンピュータのDAWに録音して使う

・モジュラーシンセだけで楽曲を構成する

などですが、どんな方法で活用するかは人それぞれです。ちなみに筆者は、モジュラーシンセを使うまではDAWやiPadのアプリで楽曲制作していましたが、もともと大雑把な性格なため細かくエディットして楽曲を完成させることが苦手でした。それがモジュラーシンセのみで制作するようになると、手を使ってパッチングしつまみを回すことで音が変化していくのが楽しくて、どんどん曲のパーツが出来てくるので、それらを即興でつなげていくことで曲になっていくようなスタイルに自然となりました。また個人的には、モジュラーシンセのみで制作を行うのも良いけど、前述のElectron製品と連携させて使うのも可能性があり良いと思います。皆さんも、今持っている機材をじっくり眺めて、モジュラーシンセを導入したらどんな風に使おう。。。といろいろ検討してみるのも楽しいと思います!

6.モジュラーシンセでライブ!

さて、モジュラーシンセにも慣れてきたところで、自分で作った曲を披露したくなりますよね!昔だったら、自作デモテープ(古い。。。)やCDを作ってレーベルに送ったりしたものですが、今だったら自宅で演奏した曲をYouTubeにアップしたりいろいろ出来ますよね。でも、モジュラーシンセは他の楽器を演奏するような感覚で、即興でいろいろな音が出せますので、是非ライブをしてみたくなりますねー。実際に、海外や日本のモジュラーシンセアーティスト達は、自宅やスタジオでの録音よりも、モジュラーシンセの即興性を逆に生かしてその現場でしか聞けないライブを好んでプレイしています。モジュラーシンセは作った音色を記憶できませんので、同じモジュールを使っていても、パッチングを変更したり、少しでもつまみの位置を変えると、二度と同じ音が再現できません。そこが、一期一会のライブに向いているのかもしれません。。。

じゃあ、どうやってモジュラーシンセでライブをするのか? これも人それぞれですが、

・自宅でパッチングを仕込んでおいて、ライブでは適時つまみをエディットし演奏

・ある程度パッチングを仕込んでおくが、ライブではパッチングとつまみのエディット両方を行い演奏

・パッチングの仕込みは一切せず、ライブで一からパッチングしながら演奏

のパターンになるようです。何と言ってもすごいのは一からパッチングしながら演奏するパターンですが、これを実際にやっているアーティストの方もいますので、尊敬しちゃいます。

概略は大体こんな感じですが、具体的にどのようにモジュールを組み合わせて演奏するのか気になる人もいると思いますので、参考までに筆者のモジュラーシンセを例にとれば以下のような感じです。

パッチング例

実際のパッチングの様子はこちらです。

パッチング画像

数個のモジュールをつないで一つの音源にして、シーケンサやトリガージェネレータでドライブしてフレーズを出して、それらをつないで曲にしていく感じですね。

また、モジュールどうしはパッチングで相互に接続されており、一つの信号をいろんなモジュールで共有することも出来るので、有機的なシステムが構築可能です。

筆者の経験から言えば、ライブをする場合、104HPx2段=208HPのケースが埋まるくらいのモジュールがあれば、大体20分~30分ぐらいのライブが可能と思います。これはあくまでも参考ですので、わずか2~3個のオシレータモジュールだけでライブを行うノイズアーティストもいるでしょうし、山のようにモジュールを積み上げてライブする使い手もいると思いますので、これも人それぞれの個性でモジュラーシンセを使いこなして欲しいです!

モジュラーシンセへの思い

ここまで筆者の駄文に付き合って頂き、本当にありがとうございました! 筆者もまだまだモジュラーシンセについては修行の身であり、もっと高度な内容を知りたければ経験豊富なアーティストのライブを見に行ったり、Webでさらに調べたり、現場で質問したりして学んで行ってください。また、やはりモジュラーシンセは触れば触るほど、新たな発見があると思いますので、是非皆さんも最初は小規模なシステムでいいので、モジュラーシンセを手に入れて使って欲しいです。

筆者もモジュラーシンセは、高価なだけで(当時)和音も出ないし、でかいし、何がいいのかわかりませんでした。それが、ハードシンセの究極の形として導入してからは、パッチングして音を聞いているだけでとても楽しく、同じモジュールでもパッチング次第で全く異なる音が出てくるため、まさに無限の可能性があるように感じています。また手でパッチングとつまみを回すことが、すごく直感的に操作出来て楽器を触っているという感じになります。

筆者も老後のひそかな楽しみとして(笑)、これからもモジュラーシンセと長く付き合っていきたいと思います。あと、島村楽器梅田ロフト店の阪口さんのほうでは、モジュラーシンセとかelektron製品とかの電子楽器を使うアーティストのライブを積極的にサポートされていますので、我こそはという使い手のかたは、是非手を挙げてください! 一緒にシンセやエレクトロニクスミュージックを楽しみましょう!

以上です。。。

shinpal

shinpal(South Osaka Modular Club) プロフィール

大阪出身。少年期にクラフトワークとYMOに衝撃を受けシンセサイザーで近所迷惑な雑音を垂れ流す日々を過ごす。老後の楽しみとしてモジュラーシンセに手を出したことがキッカケとなり、家族の白い目にもめげず、老体にムチ打ってシンセ中年として現場にも徘徊中。

大阪県内のクラブ、ライブハウス、野外イベント等にてライブ活動をする傍ら、楽器店でレクチャーを行う等、精力的に活動している。

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梅田ロフト店デジタル担当 阪口(さかぐち)
この記事を書いた人
梅田ロフト店デジタル担当 阪口(さかぐち)

DJ歴20年、現在も現役DJで活動をしているDJ専門スタッフの阪口です。
今までクラブイベントや野外イベントでDJ、バンドのトラックメイカー、オーガナイザー等々色々と活動してきましたので、DJに関する事なら何でもご相談下さい。

梅田ロフト店
梅田ロフト店

大阪府大阪市北区茶屋町16-7 梅田ロフト8F

電話番号:06-6292-7905

営業時間:10:30~21:00

HP:http://www.shimamura.co.jp/umeda/

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