Roland ( ローランド )が1987年に発売し大ヒットとなったLA方式のデジタルシンセサイザー「D-50」を再現した Boutiqueシリーズ「D-05」を発売します。(本記事内のRoland Boutiqueシリーズ専用キーボード「K-25M」は別売りです)
K-25MにセットしたD-05
Roland 「D-50」は1987年に発売された、ローランド初のフルデジタル・シンセサイザー。1983年に発売されたFM音源方式のYAMAHA「DX-7」と双璧をなす80年台の代表的な人気シンセでした。
D-50
By iixorbiusii - This file was derived from Roland D-50 Front.JPG: , Public Domain, Link
D-50はLA(Linear Arithmetic)音源という「音作りし易い」シンセというキャッチフレーズの元、発売されました(当時の価格は¥238,000)。LA音源は、楽器のアタック音などやループサウンドをPCMの音素片として内蔵し、矩形波やノコギリ波といったアナログタイプのデジタルオシレーターを組み合わせることで、これまでにない新鮮な音色を生み出すことができました。
2004年3月にはVariOS/V-SynthでD-50を再現するV-Card VC-1が発売され、最近ではRoland CloudにおいてDCB technologyで蘇ったVSTi 64-bit, AUに対応したプラグインソフトシンセ「D-50 Linear Synthesizer」が発表されています(国内では現在未展開)。
2017/9/10追記:日本国内でもRoland Cloudへの登録ができるようになったようです。
Roland Cloudで提供されているD-50 Linear Synthesizer
D-50はコーラスやリバーブ等のエフェクトを搭載しており、これは当時としては非常に画期的で、「Fantasia」を始めとするベル・サウンドや、パッド、シンセブラス等は一世を風靡し、多くのヒット曲でもそのプリセットサウンドが使用されています。
Internal #44 "Pizzagogo"
D-05で鳴らしてみました・・まったく同じ音ですね(鍵盤数の関係でボイシング異なってます)。
Internal #61 "Staccato Heaven" これもプリセットそのまんま・・FMラジオ曲のジングルでも同じような音色が使われていますね。
Internal 84 "Afterthought"
Boutique 「D-05」は、そのD-50のスペックを、DCB(Digital Circuit Behavior)テクノロジーにより忠実に再現し、多くの付加機能を搭載したコンパクトなデジタルシンセサイザーに仕上がっています。もちろん懐かしいプリセットもすべて完全再現されています!
Eric Persing氏のD-50解説
LA音源のサウンドメイキング
D-50では、PCMとアナログタイプ(シンセサイザーサウンドジェネレーター)のオシレーター(パーシャル)を2つ組み合わせた音色を「トーン」と呼び、アッパーとローワーの2つのトーンを「DUAL」「SPLIT」などの組み合わせで「パッチ」として演奏することができました。D-005もまったく同様に下記のような構造となっています。
パーシャルの組み合わせは「ストラクチャー」で選択でき、リングモジュレーターなども併用することができます。フィルターはアナログタイプのパーシャルにしか作用しませんでしたが、現代のシンセサイザーのサウンドメイキングの発想の先駆的製品ということができるでしょう。(下図はD-05のパネルに記載されたパッチとSTRUCTUREの構成表示)
D-05のブラスサウンドを例に試してみました。様々な Partial の組み合わせでトーンが構成されているのか、下記の動画をご覧いただければ理解できると思います。
この音色ではPCM音源の得意分野であるリアルなアタック音と、アナログ風のファットなサウンドを持続音として組み合わせてパッチが構成されています。このLA音源の音創りの発想は、現在のシンセにも脈々と受け継がれているといえるでしょう。D-50のサウンドは30年経った今でもまったく遜色を感じさせませんね。
64STEPシーケンサー搭載
D-05はオリジナル機には無い、Boutiqueシリーズならではのポリフォニック・シーケンサー(64STEP)やアルペジエーターも搭載。単体だけでも演奏を楽しむことができます。
シーケンサーの入力画面
シーケンサーのPlay/Stop、パターン選択画面
実際に打ち込んでみました。シーケンスプレイの後半は「ChaseMode」(ロワーのトーンを遅らせて再生する機能で、ディレイのような効果を加えることができる) をONにして、フィルターをジョイスティックでコントロールしています。
この他にもD-05は電池またはUSBバス電源で動作し、USB MIDI/オーディオにも対応。パソコンと接続すればDAWからのMIDI出力で鳴らすことができデジタル録音も可能となっています。
D-05 特長
- ローランド初のフルデジタル・シンセサイザー「D-50」を完全に再現
- 同時発音数は、D-50と同じ16音ポリ
- 最大64ステップのシーケンサー
- アルペジエーター搭載
- スピーカー内蔵、電池駆動も可能
D-50を忠実に再現した「Original」モードとクリアーな「Clear」モード
D-05にはオリジナルD-50の音源を再現した「Original」モードと、D-50よりもデジタル処理の精度を高めクリアーな音を奏でる「Clear」モードとの切り替えが可能となっています。さらっと聞いただけでは違いがわかりにくいので、DAWにレコーディングして音色比較してみました。
「Original」モード(上)と「Clear」モード(下)の音色スペクトル比較(デジランド計測)
上図のスペクトル図は、「Fantasia」パッチを同条件下の元、2つのモードを切り替えて録音したものです。「Original」モードは「Clear」モードに比べ多くの帯域において成分が加わっているように見えますが、これはD-50当時と最新のデジタル処理能力の相違等による倍音構成(エイリアスノイズ?)のせいかもしれません(デジランド推測)。このあたりは開発者の方のこだわりが感じられますね。
というわけでRoland D-50の誕生30周年にふさわしい、D-50のパワフルでクリアな美しさを現代のRoland Boutiqueフォーマットに盛り込んだ、Roland Boutique D-05が誕生しました。発売は2017年9月29日を予定、予約受付開始は9月15日(金) 16:00の予定です!
主な仕様
- 最大同時発音数:16音リニア・シンセサイザー
- パッチ/パターン・メモリー:
- プリセット・パッチ:64×6
- ユーザー・パッチ:64×8
- パターン:64
- コントローラー:
- VOLUMEつまみ
- リボン・コントローラーC1、C2
- ジョイスティック
- FUNCTIONボタン
- PRESET/USERボタン
- PARTIAL BALANCE/EDIT選択ボタン
- UPPER/LOWER/VALUE/LOCALインジケーター
- 左カーソル/F1/F2/右カーソル・ボタン/インジケーター
- CHASEボタン/インジケーター
- PORTAMENTOボタン/インジケーター
- EDITボタン
- EXITボタン
- SEQUENCERボタン/インジケーター
- WRITEボタン
- INCREMENTボタン
- DECREMENTボタン
- 数字キー(0~9、SHIFT、ENTER)
- PATCH BANKボタン/インジケーター(1~8)
- PATCH NUMBERボタン/インジケーター(1~8)
- 電源スイッチ
- ステップ・シーケンサー:64ステップ
- アルペジエーター:
- タイプ:1Oct(UP、U+D、DOWN)、2Oct(DOWN、U+D、UP)
- Step:1/4、1/8、1/16、1/4T、1/8T、1/16T
- 表示機:16桁2行LCD
- 接続端子:
- PHONES端子:ステレオ・ミニ・タイプ
- OUTPUT端子:ステレオ・ミニ・タイプ
- MIX IN端子:ステレオ・ミニ・タイプ
- MIDI(IN、OUT)端子
- USB端子:USBマイクロBタイプ(オーディオ、MIDI対応)
- 電源:
- 充電式ニッケル水素電池(単3形)×4
- アルカリ電池(単3形)×4
- USBバス電源
- 消費電流:500mA(USBバス電源)
- 連続使用時の電池の寿命:
- 充電式ニッケル水素電池(単3形):約5時間
※電池の仕様、容量、使用状態によって異なります。
- 充電式ニッケル水素電池(単3形):約5時間
- 外形寸法
- 300(幅)×128(奥行)×46(高さ)mm
- 質量(電池含む):900g
- 付属品:
- 取扱説明書
- 安全上のご注意チラシ
- アルカリ電池(単3形)×4
- 別売品
- キーボード・ユニット:K-25m
- Boutiqueドック:DK-01
Boutique D-05
発売日
2017年9月29日
販売価格
(税込) ¥50,600 (税抜 ¥46,000)
JANコード:4957054511470
ローランド「D-50」30周年特設ページ・・読み応えありますね!
Boutiqueシリーズもラインナップが充実!