Steinberg(スタインバーグ)がMS 処理にフル対応(※)したオーディオ編集、マスタリング、レストレーション・ソフトウエア「WaveLab Pro 9」と、基本性能にフォーカスしたエントリーグレード「WaveLab Elements 9 」を発表しました。
WaveLab Pro 9はオーディオ編集、マスタリング、レストレーション(整音 / 修復 / ノイズ除去)といった機能を持つソフトウエアで、放送業界などでも使用されるSteinberg社のオーディオ統合ツールの最新バージョンです。
※Elements 9はMS 処理に対応していません。
先日おこなわれた軽快な語り口でおなじみ江夏正晃氏による WaveLab Pro 9 の発表会の模様。
WaveLab Pro 9 新機能
主な新機能
- MS 処理にフル対応 (Proのみ): MS 波形表示、MS 対応プラグインスロット
- Cubase との連携機能 : WaveLab Exchange
- 最新のマスタリングに特化した VST プラグイン「Master Rig」搭載(Elements 9は機能制限あり)
- 新しくなったユーザーインターフェース : 一元化されたリボン形式のGUIを採用
- ファイル操作とユーザー設定に一括してアクセスできる集中管理型の「ファイル」ビュー
※Elements 9はMS 処理に対応していません。
以下 WaveLab Pro 9のスペックとなります。
一新されたユーザーインターフェース
- モダンな外観。選べるスキン(落ち着いたもの、明るいもの)。様々な波形表示テーマ。
- あらゆるファイルの編集を一つのウィンドウで行うために統一されたワークスペース。
- あらゆる画面レイアウトに対応するカスタム可能なウィンドウレイアウト。(ウィンドウのドッキング、グループ化)
- 各種編集コマンドに簡単にアクセスできる一元化されたリボン(※)コマンドバー。
- ※リボンとは・・・マイクロソフトがアプリケーションのツールバーやタブバーで採用している GUI 形式。従来のメニューバーとツールバーを用いたインターフェイスを置き換えるもの。(例:Microsoft Excel、Word など)
- 完全な起動ダイアログ :空のプロジェクト、前回のプロジェクト、テンプレートの選択 etc.
- 「プラグイン」メニューに追加された”検索”フィールド :プラグインアサイン時に文字入力でプラグインを検索可能に。
- 数字をベースにした新たな種類のキーボードショートカットの追加 :ショートカット例:「1 のあと V」でオーディオを波形表示、「2のあとShift+V」でオーディオをスペクトラム表示 など
ファイル操作
- 新たなコンセプトによる「プロジェクト」機能 :カスタム可能なファイルグループ機能により、ファイルの編集&整理を一つのウィンドウビューで、または複数のウィンドウビューで実行可能。
- ファイル操作とユーザー設定に一括してアクセスできる集中管理型の「ファイル」ビュー
- 利便性の高い”マルチレベル(多層式)”メニュー :複数のメニュー箇所からファイルを開くことが可能に。
- エクスプローラー(Windows)/Finder(Mac OS X)上のコピー&ペーストでファイルの展開/挿入が可能に :旧バージョンはドラッグ&ドロップのみ対応。
新しいプラグイン
- 「MasterRig」 : ハイクオリティな 6 種類のモジュール型プラグインをMasterRig プラグイン内に自由に配置可能 (モジュール:EQ、DYN EQ、Compressor、Limiter、Saturation、Imager)
- 生まれ変わった「Resampler」:処理速度とクオリティの向上。マルチコアプロセッシング対応。
- 「Multiband Expander」:マルチバンド対応のエキスパンダー
- 「Multiband Envelope Shaper」 : マルチバンド対応のエンベロープシェイパー
Cubase との連携機能 :WaveLab Exchange
(Cubase Pro/Artist 8.5.10 以降、Wave/Wave64 形式のみ対応)
- Cubase から WaveLab へ :Cubase プロジェクトウィンドウ上のオーディオイベントを WaveLab上のオーディオファイルとして展開して、その編集結果を Cubase のプロジェクト上に即座に反映できます。この機能は、Cubase プロジェクト上のオーディオに対して、WaveLab の精細な編集・処理(※)が必要になったときに役立ちます。
※オーディオのエラー修正、オーディオスペクトラムの編集、Mid/Side の編集と処理、ラウドネスのノーマライズ (EBU R-128 推奨)、解析メーター、全般情報の検出 (EBU R-128 推奨)、3D 周波数解析、Sonnox 社の復元ツールキット (DeBuzzer、DeClicker、DeNoiser)、MasterRig など
- WaveLab から Cubase へ :Cubase でオーディオミックスダウンされたファイルを WaveLab 上で使用している際に、WaveLab 上からファイルの書き出し元の Cubaseプロジェクトを開くことができます。その後 Cubase 上で再書き出しを行えば、WaveLab 上の関連ファイル/クリップに自動的に反映されます。この機能は、WaveLab モンタージュ上の各クリップ(CD トラック)に対して Cubase 上でのミックス修正が必要になった場合などに役立ちます。
- WaveLab、Cubase 切り替え時の ASIO ドライバーの最適化 :ASIO ドライバーは WaveLab、Cubase のうち常に前面にあるアプリケーションに対して有効になります。一方、エクスプローラー/Finder のような他のアプリケーションに対してはドライバーを開放しません。
マスターセクション
- ユーザーインターフェース更新
- Resampler プラグイン機能をマスターセクションに統合
- すべてのセクションにプラグインスロットを増設
- プラグインスロットごとに処理チャンネルを選択可能
(Stereo/Mid/Side/Left/Right):従来のプラグインを MS プロセッシングとして流用可能。
- モニターチャンネル切り替え(Stereo/Mono/Mid/Side/Left/Right)
レンダリング
- 一度の操作で複数のオーディオフォーマットを書き出し可能
- カスタムできるファイル名のネームスキーム(命名規則)
- CD トラックグループごとの書き出しに対応 :新たに「CD」ウィンドウに”CD トラックグループ”機能が追加された。
- 個別の CD トラック書き出し時に「トラック前/後の休止を含む」オプションを追加
オーディオファイル編集
- Mid/Side 編集 :Mid / Side チャンネルの直接編集に対応。(スペクトラムエディターも含む)
- 「全般情報の検出」 (Global Analysis)ウィンドウを複数表示可能 :「全般情報の検出」 ウィンドウを複数表示させて、複数のオーディオの検出情報を比較できるように。
- ウィンドウレイアウトのプリセット(全項目表示、ノート PC 用、最小構成表示 など)
オーディオモンタージュ
- クリップエフェクトの SEND レベルをオートメーション書き込み可能に
- プラグインスロットごとに処理チャンネルを選択可能。ダイナミクスエフェクトのパラレル処理をサポート。
- クリッププラグイン処理リソースの最適化 :クリップの再生/レンダリング時に、再生位置によって使用されていないクリッププラグインの処理リソースを自動的に開放(例:より多くのUAD-2 プラグインを使用できる)
- クリップ毎に Mid/Side 波形表示を選択可能
- Stereo クリップの Mid/Side チャンネル分割機能 :Mid/Side チャンネルを独立して処理
- 様々な方法でオーディオモンタージュの複製機能 :使用例:異なるサンプリングレートで作業する。フォーマットだけ流用して異なるオーディオクリップを扱う など
- エフェクトウィンドウの強化 :複数のエフェクトをまとめてコピー&ペースト可能に
- ラウドネスメタノーマライザー の機能強化 :(ピークレベルの均一化, ログ表示, テストモード)
- 新たな CD トラックグループ機能 :オーディオ CD レポートや CD トラックのサブセット書き出しに対応(例:side A、side B など)
- CD トラックの曲順を変更した際の休止時間への影響を改善:CD トラックの曲順を変更した場合に、、、
- 旧バージョン・・・移動したトラックと一緒に休止時間も移動
- WaveLab Pro 9・・・トラックを移動しても休止時間はそのまま固定
- テキスト形式ファイル(.txt、.csv)から「CD テキスト / ISRC」にインポート可能 :コマンド名「CD トラックの名前を CD テキストとして変更」、「ISRCコードをテキストファイルから読み込み」(CD ウィンドウ内)
- 「オーディオ CD レポート」機能の強化 :選択可能な CD テキスト、99 分以上のレポートに対応、CD トラックグループをサポート
- 「ファイル」ツールウィンドウ :モンタージュ内で各オーディオファイルが何回使用されているか確認可能
- クリップタイムルーラーの表示オプション :クリップ開始地点からの相対時間を表示可能
- マーカー情報をオーディオファイル、モンタージュ間でコピー&ペースト可能に(異なるサンプリングレート間でも適応)
- WaveLab 6 のオーディオモンタージュファイル(VST-2 プラグイン使用)との互換性を改善
ファイルフォーマット サポート
- 5.1CH サラウンド形式の WAV エンコード、AAC エンコード、MP3 エンコードに対応
- BWF ファイルのマーカー機能をサポート
- BWF ファイルの ISRC 埋め込み機能をサポート
プレイバック
- 新たな使いやすいトランスポートバー
- プレイバック ”リードシーケンス”機能
- オーディオを Mid/Side 波形表示している場合、「再生ツール」は自動的に追従
その他
- パフォーマンスの改善 :レスポンス、処理速度の向上
- 「一括処理セット」のオプションの更新 :カスタム可能なネームスキーム(命名規則)機能を追加
- 「Watch フォルダー」のログ書き出しに”テキストファイル形式(.txt)”を追加 :スプレッドシート(csv 形式)への読み込みに最適化
- 「タイムコード」ウィンドウに「精度を下げる」オプションの追加 :→ グラフィックパワーの節約
※WaveLab Pro 9 と WaveLab Elements 9 の機能比較は末尾を参照ください。
動作環境
- 対応 OS:
- Mac OS 10.10、10.11 (32bit/64bit)
- Windows 7、8、8.1、10 (32bit/64bit)
- CPU :Intel デュアルコアプロセッサー Intel / AMD デュアルコアプロセッサー
- 必要メモリー:4GB 以上
- ハードディスク:4GB 以上の空き容量
- ディスプレイ:1024×768 ピクセル以上フルカラー
- その他:
- USB 端子(WaveLab Pro):USB-eLicenser 接続用
- OS 対応オーディオデバイス(Core Audio / ASIO 対応デバイス推奨)
- DVD-ROM ドライブ
- インターネット接続環境(ブロードバンド推奨):ライセンス認証、製品登録、アップデート用
注意:Elements 9はMS 処理には非対応です。
発売日
2016年3月末
販売価格
WaveLab Pro 9 パッケージ版
(税込) ¥63,800 (税抜 ¥58,000)JANコード:4513744070810
WaveLab Pro 9 アカデミック版 パッケージ版
※ダウンロードでV9へのアップグレード可能なV8のアカデミック版となります。また学生証、教員証等のコピーが必要です。
(税込) ¥37,400 (税抜 ¥34,000)JANコード:4513744052236
WaveLab Elements 9 パッケージ版
(税込) ¥11,000 (税抜 ¥10,000)JANコード:4513744070834
Elements 9 のアカデミック版はありません。
特別優待期間(Grace Period:グレースピリオド)について2016年2月3日(水)以降に、「WaveLab 8」および「WaveLab Elements 8」をご購入されライセンスのアクティベートされたお客様は、それぞれダウンロード版の『WaveLab Pro 9』『WaveLab Elements 9』に無償でバージョンアップできます。詳細はスタインバーグサイトにてご案内します。
WaveLab Pro 9 と WaveLab Elements 9 の機能比較
全般 | ||
WaveLab Pro 9 | WaveLab Elements 9 | |
最大サンプリングレート | 384 kHz | 96 kHz |
内部処理 | 32 ビット浮動小数点 | 32 ビット浮動小数点 |
最大オーディオトラック数 | < 1000 | 3 |
マスターセクションスロット | 12 | 5 |
クリップあたりのエフェクト数 | 10 | 2 |
リアルタイム VST 3 エフェクトプラグイン | 41 | 18 |
オーディオモンタージュワークスペース: 複数のオーディオファイルを並べてのアルバムマスタリング機能 | ○ | 制限付き |
オーディオレストレーション(整音)機能 | ○ | 制限付き |
オーディオファイルワークスペース: サンプル単位でのオーディオ編集 / 解析機能 | ○ | 制限付き |
トランスポートパネル | ○ | 制限付き |
録音機能 | ○ | 制限付き |
モニター機能(メーターフリーズ含む) | ○ | ☓ |
一括処理ワークスペース(自動命名可能) | ○ | ☓ |
Mid/Side モニター / 編集 / 処理機能 | ○ | ☓ |
RF64 対応(ファイル容量無制限) | ○ | ☓ |
Watch フォルダー: ドラッグ&ドロップによる自動オフライン処理 | ○ | ☓ |
オーディオ解析 | ||
3D スペクトラム解析 | ○ | ○ |
スペクトロスコープ / オシロスコープ / レベルメーター | ○ | ○ |
オーディオの全般解析 | ○ | 制限付き |
EBU 準拠ラウドネスメーター | ○ | ☓ |
オフラインラウドネス解析 | ○ | ☓ |
スペクトロメーター / ビットメーター / フェーズスコープ / ウェーブスコープ | ○ | ☓ |
オーディオ解析ツール | ○ | ☓ |
コントロールウインドウ: 必要な解析ツールを一つのウインドウにまとめて表示 | ○ | ☓ |
エンコーダーチェッカー | ○ | ☓ |
レストレーション(整音) | ||
Sonnox DeNoiser プラグイン | ○ | ○ |
Sonnox DeClicker プラグイン | ○ | ○ |
Sonnox DeBuzzer プラグイン | ○ | ○ |
スペクトラムエディター | ○ | ☓ |
エラー訂正機能: オーディオファイル内のエラーを解析 / 修正 | ○ | ☓ |
フォーマット / 書き出し | ☓ | |
メタデータ対応 | (RIFF,ID3,BWAF,CART,iXML,AXML) | (RIFF,ID3,BWAF,CART) |
WAV, BWF, SDII, MP3, RIFF, WMA を含む多くのフォーマットへの対応 | ○ | 制限付き |
AAC エンコーダー(AAC-HD, AAC-HE を含む) | ○ | ○ |
Steinberg DAW とのファイル交換機能 | ○ | ○ |
CD オーディオ書き込みエンジン | ○ | 制限付き |
DDP フォーマット対応 | ○ | ☓ |
処理 | ||
オフライン処理の数 | 25 | 16 |
タイムストレッチ / ピッチ修正 | ○ | 制限付き |
エフェクトセクション(クリップ / トラック / マスターエフェクト) | ○ | 制限付き |
iZotope MBIT+™ マスターディザリング | ○ | ☓ |
EBU 準拠ラウドネス処理 | ○ | ☓ |
パン / ラウドネスノーマライザー | ○ | ☓ |
統合リアルタイムリサンプラー | ○ | ○ |
標準ディザリング | ○ | ○ |
ワークフロー | ||
シングルウィンドウユーザーインターフェース | ○ | ○ |
エフェクトチェーン表示: シングルウィンドウでのプラグイン管理 | ○ | ○ |
ウィンドウドッキングシステム | ○ | ○ |
スタートアップダイアログ | ○ | ○ |
オーディオファイルブラウザ | ○ | ○ |
16 ビット浮動小数点高解像度波形ズーム | ○ | ○ |
編集時の自動再生 | ○ | ○ |
ポッドキャスト機能 | ○ | ○ |
マーカー機能 | ○ | 制限付き |
ショートカット / リモートコントロール対応 | ○ | 制限付き |
スピーカーマネージメントシステム: 最大8種類のスピーカー構成切り替え | ○ | ☓ |
スーパークリップ: 複数のクリップをグループ管理 | ○ | ☓ |
自動分割 / カスタムクリップ書き出し / 再生中の選択などプロ用編集機能 | ○ | ☓ |
マルチフォーマットレンダリング | ○ | ☓ |
5.1 サラウンドレンダリング | ○ | ☓ |
マルチレンダリング(自動命名含む) | ○ | ☓ |
プロジェクトマネージャー | ○ | ☓ |
拡張メニュー | ○ | ☓ |
ファイル比較 | ○ | ☓ |
タイムコード表示 | ○ | ☓ |
クリッププラグインセンドオートメーション | ○ | ☓ |
シグナル / DTMF ジェネレーター | ○ | ☓ |
ステレオ信号方式の一つである Mid/Side 方式のこと。一般的な L/R 方式では左側(L)と右側(R) の音声信号を処理するが、M/S 方式では Mid と Side の音声信号を処理する。音の定位の“中央 付近のみ”、“左右の成分のみ”、といった通常のステレオ処理では不可能だった処理が可能となるため、センターに位置しているボーカルや楽器のみの調整や、ステレオの広がりなどの 調整をマスタリングの段階で施すことができるようになる。