【脱プリセット~初心者のためのシンセ音作り】 その2 音色を変えるフィルター

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こんにちはサカウエです。前回の記事「音の出だしとADSR」では、シンセの音色作りは「最初は4~5種類のパラメーターを覚えればO.K.」と書きました。その一つが、シンセの音量や音色を時間的に変化させる「エンベロープ(ADSR)」だったわけですね。

ADSR

ローランドのシンセ「JUNO-Di」にある「ATTACK(アタック:鍵盤を弾いてから音が出るまでの時間)」と「RELEASE(リリース:鍵盤を離してから音が消えるまでの時間)」ノブは、ADSRのAとRの部分であることはご理解いただけたと思います。

さて今回は、下の写真で回しているノブ「CUTOFF(カットオフ)」とその隣の「RESONANCE(レゾナンス)」というパラメーターを持つシンセの重要な要素=「フィルター」をご紹介したいと思います。これでほぼ音色づくりの基本はマスターできると思いますので、頑張っていきましょう~


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フィルターとは?

コーヒーのペーパーフィルターは、挽いたコーヒー豆にお湯を注ぎコーヒー成分を抽出する際に使用します。また「インターネットの有害サイトにフィルター制限をかける」といった言い回しを耳にすることがあると思います。このように「フィルター」には、

特定の成分を取り除いたり弱めたりする

という働きがあります。

シンセのフィルター

さて、シンセサイザーの場合ですが、ある音から特定の周波数成分を除いたり、弱めたりするセクションを「フィルター」と呼びます。つまりこれで「音色」を変えることができるわけですね。そして「CUTOFF」や「RESONANCE」というのは、このフィルターセクションの中でも特に重要なパラメーターになります。

フィルターの種類

フィルターにはその特性の違いによって色々な種類が存在します。ざっと挙げると

  • ローパス・フィルター
  • ハイパス・フィルター
  • バンドパス・フィルター
  • バンドエリミネーション・フィルタ
  • コム・フィルター
  • マルチバンド・フィルター

以下省略・・(各フィルターの名称は機種ごとにで呼び方が変わったりもします)

たくさんありすぎて不安になってきた方、心配ご無用!今回は基本の「ローパス・フィルター(LPF)」だけ覚えればOK。本格的な音作りが可能な高額シンセには複数のフィルターが搭載されていることもありますが、「ローパス・フィルター」しか搭載されていないシンセサイザーも実は多いのです。そんなわけで基本はローパス。

KorgのVolca KeysもLPFのみ


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この基本のローパス・フィルターの仕組みと働きさえ覚えてしまえば、その他のフィルターも容易に理解することができると思います。たとえばハイパス・フィルターはローパスの逆でハイを通すもの、バンドパスはローパスとハイパスの組み合わせで特定の帯域だけを通すフィルターです。

ローパス・フィルターのイメージ

screenshot_544

ハイパス・フィルターのイメージ

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バンドパス・フィルターのイメージ

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ローパス・フィルターの仕組みと役割

CUTOFF:カットオフ(※)

音には「大きさ」「高さ」そして「音色」という3つの要素があります。私たちは、楽器などの「音色」を表現するのに「柔らかい」、「明るい」、「暗い」・・など、さまざまな表現をしますが、これらは周波数成分(音の振動の単位:大きいほど高い音となる)の構成によって異なります。たとえば高い周波数が多く含まれていると「明るい」「シャリシャリ」というように感じたりするのですね。

ローパス・フィルターは文字通り、低い成分(ロー)を通す(パス)フィルターです。逆に言えば「高い成分(ハイ)を削る」というフィルターになります。どのポイントを堺にハイを削るか(これを「カットオフ周波数」といいます)を決めるのがカットオフというパラメーターです(※機種によって表記が異なる場合もあります)。それでは実際に試してみましょう。

ソフトシンセMini-Vのホワイトノイズ(FMラジオのノイズ音と同じ)をローパス・フィルターを通し、「CUTOFF」ツマミを絞っていきました。

動画で右画面は「スペクトラム・アナライザー(スペアナ)」といって、音の周波数分布を目で見ることができるソフトです。横軸の右に行くほと高い周波数(音程)となり、縦軸は音量です。

【関連記事】【今さら聞けない用語シリーズ】倍音(ばいおん)ってなに?

ホワイトノイズはすべての周波数が同じエネルギーを持つという音ですが、ローパス・フィルターを絞っていくことで徐々に高い周波数成分が「削り取られて」いくのがわかると思います。(スペアナ・ソフトはiZotope社のOzoneを使用しています)

0003

このように、ローパス・フィルターの「CUTOFF」は、削る帯域をコントロールすることができるのです。ノブの場合、通常は左に回すことで「高い成分を削って」いくことができます(スライダー・タイプのシンセでは下げるまたは左)。高域成分を削っていくとだんだん「暗く」「地味に」なっていくというイメージかと思います。強力なローパス・フィルターの場合、ノブを左に回しきると完全に音が消えてしまいます。DJ機器に付いているアイソレーターはイコライザーに近いものですが、任意の帯域を増減するという点ではフィルターに似ていますね(原理は異なります)。

Korg Volca Bassのカットオフ・ノブ

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Nord Lead A1のカットオフ・ノブ(FREQという表示ですね)

IMG_9982

Roland AIRAシリーズ「TB-3」のカットオフ・ノブ

0002

ビンテージアナログのARP2600 by wikipediaスライダー式です

ARP_2600_panel,_Energo_2011

そういえば大昔はアナログシンセのホワイトノイズとローパス・フィルターを組み合わせて「砂浜の波の音」や「カミナリの音」などを作っていました・・・(遠い目)

レゾナンス

カットオフ同様、フィルターの中で重要なパラメーターがこのレゾナンス(RESONANCE)です。ピーク(PEAK)やエンファシス(EMPHASIS)などと表記している機種もありますが、シンセ独特の「ビョーン」「ミョーン」という過激なサウンドはこのレゾナンスのおかげと言ってもよいでしょう。

レゾナンスはカットオフ周波数近辺を強調する機能ですが、言葉で説明してもわかりにくいので実際にサウンドをお聞き下さい。

前半はレゾナンス・ゼロ、後半はレゾナンスを上げています。これでシンセ独特のサウンドになるのがお分かりいただけると思います。

DJの方が機材のツマミを回して音色を変えるパフォーマンスがありますが、この時は大抵このカットオフとレゾナンスを触っている場合が多いのではないかと思います。

参考動画 RolandのTB-303

ADSRでフィルターをコントロール

前回紹介したエンベロープ・ジェネレーター(EG)を思い出して下さい。あの時は

音量を時間的に変化させる

ためにエンベロープ・ジェネレーターを使いました。音の出だしや消え方をコントロールしたのでしたね。では今回は

音色を時間的に変化させる

ことにいたしましょう。つまり、エンベロープ・ジェネレーターのADSRでフィルターの開閉をコントロールするのです。

たとえば、楽器の音というのは音が出てから持続、または徐々に減衰していったりするわけですが、その間音量の変化と同時に音色も変化します。例えばチョッパー(スラップ)ベースの音は、最初は「ベンッ」という音があってその後は弦の振動音が減衰していきますし、アコピだったらアタックにハンマーが弦を叩く「ゴン」という音が入ります。バイオリンやギターでもアタックは弓やピックで弦を引っ掻く「ギョリッ」というノイズが生まれるわけですね。

アタックに「ブチッ」というノイズがあるシンセベースを例に、音色の時間的な変化を見てみることにしましょう(波形編集ソフト Sound Forge Pro を使用)。

全体の波形

0004

アタック部分の波形・・・複雑な倍音が含まれています

0006

発音してから100ms(0.1秒)後の波形・・・すでに比較的シンプルな音になっていますね

0005

というわけで、音の出だしと中間部では音色が全く異なっているということがお分かりいただけると思います。そしてシンセでこの時間的な音色変化を生み出すためには、前回同様エンベロープ・ジェネレーターを使用します。

音量の場合は「アンプ」セクションをEGでコントロールします(イメージ)

ENV_AMP

音色の場合は「フィルター」セクションをEGでコントロール(イメージ)

ENV_FILTER

アタックのあるシンセベースを作る

実際にエンベロープ・ジェネレーターでフィルターをvしてみましょう。ノコギリ波などを使ったシンセ音色プリセットを呼び出します(ザラザラ系がオススメ)。

フィルターの変化をわかりやすくするため、今回アンプのエンベロープ・ジェネレーターはオルガンタイプのシンプルな設定にしておきます。弾いたらすぐ音がなって離したらすぐ音が止まるタイプのエンベロープですね。

screenshot_472

フィルター側のエンベロープ・ジェネレーターのADSRはこんな感じにします

screenshot_476

それでは実演動画をご覧ください。

大切なのはエンベロープ・ジェネレーターからフィルターへの変調する量の調節。これを行わないとエンベロープ・ジェネレーターでフィルターをコントロールする事ができません。ソフトシンセMiniVの場合は「AMOUNT OF CONTOUR」がそれにあたります。

鍵盤を押したと同時にカットオフがエンベロープ・ジェネレーター(EG)によって開きますが、フィルターEGのサスティーンが0なので、ディケイ・タイムの設定時間でフィルターはすぐに閉じます。これで出音には「ビョン」というアタック音が加わることになります。この「ビョン」の長さがディケイ・タイムでコントロールできるというわけです。

まとめ

ではエンベロープ・ジェネレーターで音量、音色をコントロールする流れをまとめてみましょう。

エンベロープ・ジェネレーター1基しか搭載していない機種の場合:音色も音量も同じエンベロープ・ジェネレーターが働きます。(青⇒は信号の流れ)

1ENV

機種によっては2基のエンベロープ・ジェネレーターをアンプとフィルターに1基ずつ独立して使用可能なモデルもあります。

イメージ

2ENV

音量と音色を別々にコントロールできるので音色作成のバリエーションが豊富になります。このほか音程(ピッチ)もエンベロープ・ジェネレーターでコントロール可能な機種もあります。

これオススメです。無料iPadアプリ、Steinbergの「Nanologue」 黄色の⇒がCUTOFFとRESONANCE

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というわけで、エンベロープ・ジェネレーターでフィルターをコントロールする方法はご理解いただけましたでしょうか?本物の生楽器のプレイングノイズなどは非常に複雑な倍音構成を持っており、アナログシンセのようにノコギリ波や矩形波といった波形をフィルターで変化させるという方式では非常に困難です。以前も書いたとおり、こうした生楽器系の音色を再現することができるのは、サンプリングした波形を使用するPCM方式のデジタルシンセが一般的でしたが、他にも物理モデル(フィジカルモデリング)などの方式を採用した製品もよく目にするようになってきました。

KORG MS-20 miniで音作りしてみました~

それではまた次回まで~


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