- なぜケーブルで音が伝わるのか?
- ケーブルと端子(プラグ)の種類について
- RCAケーブル
- フォーンケーブル
- 実は二種類あるフォーンケーブル
- TRSとTSの違い
- ホット、コールド、グラウンド
- バランス(均衡)方式
- アンバランス方式(不平衡)
- XLR(キャノン)ケーブル
- すべてバランス方式にする必要はあるか?
- ステレオヘッドホン・イヤホン
- スピーカーケーブルとの違い・注意事項
実は二種類あるフォーンケーブル
ここで「??」と思われた方も多いのではないでしょうか(特にギタリストの方)。じつは標準フォーンケーブルには扱う信号の数によって「TRS」と「TS」という2種類があるのです。
数の違いは信号の転送方法の違いとなりますが、フォーンプラグのそれぞれの名称を覚えておきましょう。
- スリーブ(S)
- リング(R)
- チップ(T)
- 絶縁リング
とよびます。そしてそれぞれの名称をくっつけて、上が「TRS」フォーン(プラグ)、下が「TS」フォーン(プラグ)と呼ばれています。
ギターとアンプを接続する俗称「シールド」は「TSフォーン<>TS」フォーンですね。
TRSとTSの違い
ここでTRSとTSの違いをまとめてみると
- TRS:3極(3種類の信号をやりとり):・モノラル信号・バランス接続、またはステレオ信号・アンバランス接続
- TS:2極(2種類の信号をやりとり):・モノラル信号・アンバランス接続
実はアナログ・オーディオ・ケーブルの信号のやりとりには「バランス」と「アンバランス」という2種類の方式があるのです(アンバランスは略して「アンバラ」などとも呼ばれますね)
「TRSはステレオ信号じゃないの?」という方も多いと思いますが、TRSは後で出てくるXLR(キャノン)ケーブル同様「モノラルでバランス接続」として使用されるケーブルでもあるのです。
ローランドのシンセ音源モジュール「INTEGRA-7」のリアパネルのアウトプット・フォーン・ジャックは3極の「TRS」(バランス)です(TSも使用可能)。
「バランスとアンバラ」という言葉は一度は聴いたことがあると思います。
と漠然とは知っている方も多いのではないかと思いますが、それはなぜでアンバラとは一体なにが違うのでしょうか。
ホット、コールド、グラウンド
ここで交流電流(家庭のコンセント)で電球を光らせることを考えてみてください。コンセントからは「2本」の電線でスタンドとつなぐ必要がありますね。そして電流はプラスとマイナスで行ったり来たりします。
ちなみに家庭の交流電流は、関東では50Hz(ヘルツ)関西では60Hzという単位(1秒あたりの振動数)で山と谷を行ったり来たりしているわけです。すると蛍光灯はその構造上、周波数の倍、すなわち1秒間に100(120)回ちらついていることになります。
さて、ケーブルを伝わるオーディオ信号は交流電流ですので同じ考え方ができます。良くこんな図を見かけますが
上図で山の部分(+)が本来の信号をHOT(ホット)、逆向きがCOLD(コールド)
「コールドはホットの逆相(ぎゃくそう)」という表現ができます
さて、ここで一つ問題がありまして、オーディオ信号は非常に小さな信号なのでノイズの影響を受けやすいのです。したがってケーブル内にある2本の芯線を金網状のもので覆う(シールド)処理が行われ、シールドはグラウンド(GND)に接続されます。以上HOT,COLD,GNDの3本の電線を使用する接続方法を「バランス」=平衡(へいこう)方式とよびます。
TRSの断面図イメージ
バランス(均衡)方式
「GROUND(グラウンド)」「HOT(ホット)」「Cold(コールド)」の3種類で信号を伝送するのが「バランス」方式ですが、たとえばここでノイズが割り込んできたとします。繰り返しますが元の信号のCOLDはHOTの逆相です。※信号の形はイメージです
ノイズはホットとコールドの両方に同じ位相で入り込みます。・・・ここがポイント。
バランス回路において、信号は最終的にアンプ部分でコールドの位相を反転させホット信号にミックスするという処理が行われます。音には「ある信号の同相同士が足されると信号は倍になり、逆相同士が足されると打ち消し合う」という性質があります(ノイズキャンセリング・ヘッドホンやレコーダーのセンターキャンセル機能等はこれを利用したものです)
したがって(理論的には)最終的に回路でミックスされた元の音声信号は倍、ノイズは打ち消し合うという現象がおこります。
これがバランス方式がノイズに強いという理由ですが、バランス方式はケーブルや回路が複雑になるため、コストが割高になるというデメリットが有ります。
アンバランス方式(不平衡)
一方、アンバランス方式ですが、これはグラウンド(シールド)をコールドとしても使用する方式。つまり「ホットとグランドの2種類」で信号をやりとりする方法です。バランスと比較するとノイズには弱くなりますが安価で済むというメリットがあります。
ギターで使うケーブルはTS、すなわちアンバランス方式です(シールドをコールドとして併用)
TSの断面図イメージ
XLR(キャノン)ケーブル
キャノン社(カメラのCanon社ではありません)が作ったので一般的には「キャノン・ケーブル」と呼ばれます。キャノン・コネクタがついた3ピンのケーブル。バランス接続の代表格ケーブルですね。
マイクや高価格帯のシンセ、ステージピアノ等で使われていますが、一目瞭然、3種類の信号のやりとりを行っています。したがって「バランス」方式対応。構造上頑丈なのと、ロックがついて抜けにくいという特徴があります。
XLR(キャノン)ケーブル
なお「1,2,3」と3つのピンが見えますが、現在では
- 1番グランド
- 2番ホット
- 3番コールド
が国際標準となっています。古い機器だと「3番ホット」という場合がまれにあるかもしれないので念のため注意してください。
XLR(キャノン)出力端子