【録れコン2017】リプロダクションレポート 鎌田岳彦氏 コメント

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鎌田岳彦氏コメント

先ずは odasis さん、今回のグランプリおめでとうございます。そして、リプロダクションお疲れさまでした。選考会で、グランプリが決まってからリプロダクションをどのように進めるか、私自身を含め、今回はちょっとアイディアがまとまらなかったです。というのも、今回の受賞作品 Sweet Lullaby は、音数も厳選されていて、とてもシンプルにまとまったアレンジで、ギター・唄ともに、独特な雰囲気・サウンド感で、この作品を構成してます。もう一つの完成された作品という事が言えますね。

マルチトラックのデータをもらってから、今回のリプロダクションチームと、打ち合わせ。「ギタートラック差し替える」「唄を録り直す」共に、もっと良い音で録音し直す案!

「ブラスを新たに加える」「生のストリングスをダビング」これは新たにアレンジを加え録音する案!odasis さん本人の意向も含めて、共にボツに!もっとも、アイディアだけで、リプロダクションの時間やスタッフ的にもオーバー企画でした。

そこで、ギターや歌以外のトラックに注目。バランス的にあまり大きく無かった「打楽器類やオルガントラックを、入れ替え・ブラッシュアップ」という流れになりました。

そこで「ギターのグルーヴに合わせられる、ミュージシャンに頼もう」と言う事になり、今回のリプロダクションの形に。

それとは別に、もし私がミキサーとして参加していたら、どんなサウンド・バランスになるか…

先ずは、ザックリとバランスを取り直したところ…

  • ギタートラックの音をもっと存在感ある音に(低域の充実と倍音豊かな音に)
  • オルガンは躍動感ある音に(音色や音程感の修正、バランスの再考)
  • ボーカルのピッチの修正・バランス(特に低音域の音程・音量)

幾つかリプロダクション前に自宅で、プリリプロダクション(笑)を。

リプロダクション当日です。パーカションの岡部氏とは事前に我が家で打ち合わせをして、音源も渡してあり当日の具体的な作業は彼のアイディア・プランにまかせてありました。いきなりDrのハードケースや一斗缶にマイクを立てる事に(苦笑)。それから、幾つかの打楽器を録った後、 odasis さんのアイディアで、幾つかの”トイ楽器”の音を録音。最後に、「おもちゃ箱をひっくり返した様な音」をお願いして録音終了!ベーシックギターパートに馴染む、グルーヴ感あるトラッキングの腕前は流石でした!

さて、ここからは、自宅でのプリリプロダクションした、データと今日の録音したトラックとのミックス。ギターとパーカッションの低域を修正して、各打楽器のバランスを調整。オルガントラックは、音色を少し存在感ある音にして、バランス的にも大きめに。ここでギターとピッチ感(チューニングが違う)が気になって、トラックごと修正(+17cent)。それと、一部ギターのコード感が気になり、ここも odasis さんと相談して、修正(メロダイン・ポリフォニックエディット)。楽器の数が少ないので、バックトラックのピッチ感やコード感は非常にシビアに直していきました。残りのギタートラック足して、バックトラックのブラッシュアップがほぼ出来ました。

後半のコーラスパートのバランスをとります。トラック的には”歌詞の追っかけパート2つ”と、”ワッハーと歌詞無しのパートが一つ”の3つのパートで、10トラック程で、シンプルなアレンジ。それぞれの定位感・奥行き感を変えて、”2つめの歌詞の追っかけ”パートを、左右の定位の外に広げる定位感に(ちょっと反則技ですが)。ボーカルパートは、基本的に自宅で”ザックリ”と音程の直し(メロダイン)してあります。半音か全音か曖昧な音程感と、”低い音域のニュアンス(雰囲気)で唄っている箇所”をある程度明確に(笑)。さらに細かい部分的修正と音量バランス、特に低音域(声が小さくなってしまう所)のバランス感を補正を。ただし音量を上げすぎると、不自然に聞こえるのでモニター音量、スピーカーの種類を変えつつ調整。

これで、基本的なトラックはほほ出来上がりました。最後に”トイ楽器”とイントロ前とエンディング後の”ギフトトラック”これは、当日パーカッション録音時に思いついた音(プランに無かった)の、追加トラックです。ここからは完全にその場のアイディア(ヘッドアレンジ)での進行になります。音楽的な構成楽器では無いので、入れるタイミングも、音量・質感・エフェクトの量など、皆さんの好き嫌いも見事に反映したので紛糾しましたが(笑)無事ミックスが出来上がりました。

今回の受賞作品 Sweet Lullaby は、殆ど生楽器を録音したトラックでした。デスクトップで簡単に様々な楽器の音を楽器の音を出せる今時、面倒でもマイクを立てて録音するのは、とても嬉しい限りです。ただし今回はボーカルやギター以外のトラックは、我々が打ち込みと勘違いする音で、アコースティック感が十分に感じらないサウンドだったのはちょっと残念でしたね。ボーカルやギターと違って、素人演奏的な事があるとは思いますが、最低でも1~2小節のフレーズサンプルを多用したら、かなり個性的なグルーヴが作れたかもね!それと、今回は唄・演奏・録音・ミックス全て一人で担当していますが、今回のように、音楽はアンサンブルする事で、他の人のアイディアや技術・経験を取り入れられます。音楽的にもサウンド的にも”科学反応”が起きる可能性がありますからね。もちろん、音楽のジャンル・年齢・性別・国籍…と、簡単にコミュニケーションが取れるとは限りませんが、そこのは共感・違い・幅・奥行き…様々な差異を楽しめますからね。

今回のリプロダクションが、これからの作品作りに”良いきっかけ・ヒント”になると、嬉しいですね!

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